【成果報告】RUDY JAPANでの患者参画の取り組みについて報告する論文の紹介

2024年12月に発行された専門誌「遺伝子医学 50号」において、
RUDY JAPANで行っている患者参画の取り組みを報告する論文が掲載されました。


論文タイトル

RUDY JAPANにおける患者・市民参画
遺伝子医学Vol.14 No.4 p37-42 /メディカル・ドゥ出版
https://www.molcom.jp/products/detail/166534

以下、論文が書かれた背景と報告内容(一部)、そして意義についてご紹介します。

背景:RUDY JAPANと患者参画

RUDY JAPANは、「①登録者の皆さんからの質問票回答を収集・解析することで、希少疾患に関する理解を深める」という研究プロジェクトです。
そして、同時に、「②<患者と研究者が一緒に研究を進める>という新しい医学研究の進め方」に関しても、実践を通して研究を行なっています。
今回発表した論文は、上記のうち②の側面――「患者参画(患者・市民参画)」や「患者の積極的な関与」といった言葉が使われます――についての成果を報告するものです。
日本では、2018年から国の研究助成機関が患者・市民参画の推進をはじめ、患者さんと研究者が一緒に研究を進める取り組みに注目が集まっています。
一方で、国内では比較的実践例が少ないため、患者参画の実践やその報告はほとんど行われてきませんでした。

論文の概要と意義

今回の論文では、RUDY JAPANの構成や概要について紹介したのち、2024年8月現在のRUDY JAPANでの患者参画の取り組みを紹介しました。

具体的には二つの患者参画の取り組みを紹介しています。一つは運営ミーティングで、もう一つはHAEでの「発作の記録」作成に関する患者参画です。

以下、報告した内容を抜粋して紹介します。

<運営ミーティングについて>
全疾患の患者と研究者が定期的に集まって、様々な話題を話し合ってきたこと、その成果を報告しました。
議題の例としては、「質問票に回答する人を増やし、継続的に回答してもらうための戦略」や、「今後どのような研究(質問票調査など)が行われると良いか」といった内容が挙げられます。
例えば、研究参加のメリットを明確に表現する必要性が指摘され、メリットに関しての話し合いと広報文章の作成・使用につながりました。

<HAEの「発作の記録」作成について>
HAEでは、現在も使用している「発作の記録」の質問票を、患者と研究者が共に作成したという経緯があります。
患者パートナーからの提案をきっかけに新たに作成された項目としては、例えば「治療を受けなかった理由」などが挙げられます。
この項目は、症状の程度だけではなく、生活上の様々な要因によって治療を受けるかどうかを判断しているという患者側の指摘から作成されました。

この「発作の記録」質問票を用いた調査の結果は、2024年に別の論文で報告されました(詳細はこちら)。
発作のうち3分の1は治療を受けていないこと、その理由は症状が軽度なために受診に対して消極的であったことがわかりました。
自宅でも行える自己注射による治療の重要性など、治療環境の改善を示唆するデータとして理解できます。

質問票を患者とともに共同作成したことで、このように新たに症状の詳細が明らかになり、治療に関する提案につながるという実践を報告することができました。

まとめ

前述の通り、注目が集まりつつあるものの、日本では患者参画の実践報告は多くありません。
どのように話し合いを行い、どのような変化が生じたのかを記述することは、他の取り組みを促進し、またより良い進め方を検討する上で重要だと考えられます。

今後もRUDY JAPANでは、患者参画の実践と、その報告に努めてまいります。

皆さんの意見もいつでもお知らせいただけますと幸いです。