【成果報告】RUDY JAPANプロジェクトからの出版論文の紹介

RUDY JAPANは、「①登録者の皆さんからの質問票回答を収集・解析することで、希少疾患に関する理解を深める」という研究プロジェクトです。そして、同時に、「②<患者と研究者が一緒に研究を進める>という新しい医学研究の進め方」に関しても、実践を通して研究を行なっています。

私たち研究チームは昨年、上記のうち②の側面――「患者参画(患者市民参画)」や「患者の積極的な関与」といった言葉が使われます――についての成果をまとめ、論文を発表しました。

日本では、患者参画の実践やその報告はほとんど行われてきませんでした。今回の論文発表で、RUDY JAPANの研究活動と成果を報告し、日本国内での患者参画の事例について世界に発信することができました。加えて、患者参画を実践する、世界中の患者さんや研究者にとって役立つ情報を共有できるようになりました。

この論文は、世界中の人に読まれることを目的に、全て英語で書かれています。

いつも協力してくださっている登録者の方にも成果をお伝えしたく、以下に、その論文のサマリー(どのような論文内容かを簡潔に紹介するもの)の邦訳を掲載します。


【論文タイトル】

The practice of active patient involvement in rare disease research using ICT: experiences and lessons from the RUDY JAPAN project

邦訳「情報通信技術を用いた希少疾患研究への積極的な患者関与の実践:RUDY JAPANプロジェクトの経験と教訓」­

全文はこちら: https://doi.org/10.1186/s40900-021-00253-6 

【サマリー(簡潔な論文紹介) 】

 英国や米国をはじめとする多くの国(顕著ではないものの日本も含む)で、患者は従来とは異なるさまざまな方法で医学研究に携わっています。このプロジェクト(RUDY JAPAN)では、研究プロジェクトの設計や運営に患者が関わることができるように、「患者のより積極的な研究への関わり(患者参画)」に特に着目しました。私たちはデジタル技術を使うことでこの患者参画を実現することができました。これにより、患者と研究者がチームとして協力する新しい機会が生まれました

 私たちは、英国で実施されている同じようなプロジェクトをもとにして、RUDY JAPANと呼ばれる、インターネットを用いた、患者と研究者の積極的な対話を特徴とし、希少疾患を対象とする研究プロジェクトを立ち上げました。RUDY JAPANでは、インターネットを介して症状やQOL(クオリティ・オブ・ライフ:生活の質)などの患者が報告するデータを収集できるだけでなく、患者は研究者と協力して新しい研究方法を設計したり作り出したりすることができます。この論文の本文では、もともと英国で開発されたシステムと構想を、日本の状況に合わせてどのように適応させたかについて説明しています。また、患者の積極的な関わりを実現した、以下の活動についてもその詳細を報告しています。

  • 運営ミーティング:患者と研究者がオンラインで定期的に集まり、プロジェクトについて話し合ったり、判断したりする場
  • 患者と研究者の協働による、症状と治療の効果を記録するための新しい質問票の作成
  • 交流フォーラム:患者と医師がつながり、QOLに関することなど、幅広いトピックについてコミュニケーションできる場

 この患者と研究者の協働を通じて、インターネット上のコミュニケーションを活用した、医学研究へのより積極的な患者の関わりが日本でも実践できることを実証しました。私たちは、患者と研究者が協働するための、既に確立している方法や、私たちが考えた新しい方法を試すことができました。これは、患者と研究者の間の効果的なパートナーシップの構築につながりました。


論文やこの研究成果について、もっと詳しく知りたい方へ
  • この論文について、RUDY JAPANの登録者の方を対象に、来月・4月中旬にオンライン上での報告の機会を設ける予定としています。ご関心をお持ちの登録者の方は、ぜひご視聴ください(3月末までに、当サイトなどで詳細を掲載します)。また、当日ご都合の合わなかった方に向けて、動画の後日共有を計画しています。
  • 論文出版時の第一報は、こちらのURLよりご覧いただけます。